元気!本気!勇気!毎日の しあわせメモ

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音を聞かせないラジオ

こんな逸話がある。

戦後間もない昭和20年代の、
プロ野球がまだ職業野球と称されていた頃のこと。

テレビ放送はないからラジオ実況中継だ。

敬遠をアナウンスするのに、
NHKアナウンサー志村正順氏はこうした。

differentな企画の好例だ。

 

 

「キャッチャー、立ち上がりました」

 

しばし、沈黙。

 

キャッチャーミットに収まる球音を四つ、
リスナーに聞かせた。

 

「お聞きのように、敬遠のフォアボールです」

 

リスナーは

バッテリーとバッターの間に渦巻く心理、
試合の流れ、ここで敬遠にする意味、
他の選手の思惑、
そして球場を包む空気を、

それこそ全身を耳に集中させ、
想像力フルパワーで聴いたに違いない。

 

自然に耳に入る「聞く」が

身を乗り出して「聴く」姿勢に変わったはずだ。

 

音だけでリスナーは

球場の臨場感と試合の迫力、

緊迫感を感じ取ることができた。

 

*朝日新聞 2005年5月22日付「声」欄掲載  小川宏氏投稿記事を参考にした

 

 

音を聞かせるラジオという媒体において、
敢えて音=アナウンスを加えない。

リスナーは全身で聴く。

通常であれば受動のリスナーが、
主体的に関わる体勢へとみちびいた。

新しいラジオ体験。

 

ラジオはもちろん!
音を聞かせるメディア。

しかし、

「音を聞かせない」という、

「裏返し」で考えてみたとき、

新しい可能性の地平がそこに開ける。

 

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